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終る終る詐欺?

最終章、予定文字数の半分まできました。
今、書いている部分をちらっとお見せすると ――――


 十六夜の母の酌で杯を空けているうちに身支度を整えた十六夜が、新たな装いで座敷に入ってきた。濡らさぬよう気をつけていたのだろうが、髪の先が湯に浸かったのか十六夜の匂いと髪に付ける香油の艶かしい匂いが立ち上ってくる。純白の地に鮮やかな赤で吉祥紋が縫い取られた小袿に着替え、うっすらと施された化粧が十六夜の清楚な美しさを引き立てていた。
 闘牙の横で酌ををしていた十六夜の母が、すっと闘牙の側を離れ十六夜とともに闘牙の前に額づいた。頭を下げていた十六夜が、決意を瞳に宿らせて闘牙の顔を見上げる。その様子には、なにか凛と張り詰めたものがあった。

「……女の身でかような申し出は、はなはだはしたなき振る舞いと存じております。互いに文を交わした事も無く、ましてやわたくしは闘牙様の加護を受ける身。このような申し出は、闘牙様のお気に障るやもしれぬと思いつつも、今 言わねば言うべき時を見失ってしまいます」
「十六夜……」
「どうかわたくしを、闘牙様の妻にしてくだされませ! 伏してお願い申し上げます」

 再び頭を下げる十六夜とその母。この時代、まさか女性側からの求婚など、あるものではない。闘牙も猛丸から十六夜の気持ちは聞いていたとは言え、こちらから水を向けるつもりだっただけに思わず眼を剥いてしまった。

「……俺には国に妻や子がある、それは承知か?」
「はい、存じております」
「お前は、決してその者らとは同列にはなれぬ,日陰の身となるがそれでも良いのだな?」
「構いませぬ。私が添いたい殿方は、闘牙様をおいて他におりませぬ。正妻の地位欲しさに、好きでもない殿方に我が身を託すような、そんな不誠実な真似はしたくありません」

 猛丸が言うように、十六夜の決心は固い。闘牙とて、十六夜が愛しくない訳は無い。だからこそ……。

「俺がどんなモノであっても、お前は俺に添いたいと、そう申すのか?」
「それは心から」

 闘牙の指がパチリと合図を送ると、屋敷の端女達が一斉に座敷の建具を立て始めたちまちのうちに座敷内と庭が隔てられた。外からは座敷に中を窺うことは出来ない。

「……最初に言っておこう。お前の態度がどう変ろうと、俺の気持ちは変らない。お前達を守り、武内殿の仇を取る。それは、信じて欲しい」
「言うまでもないこと。わたくしたちは、闘牙様を信じております」
「そうか。その言葉、この姿を見ても言ってもらえれば嬉しいがな」

 手にした杯を置き、いささか自嘲気味に呟くと、かっと眼を見開く。闘牙の体から放たれる気なのか、一瞬辺りが眩しく感じられ、十六夜と母は目を伏せた。光がやんだような気がして視線を闘牙の方へと向けるとそこには……。

「い、犬っ!?」

 驚いたような声を出したのは十六夜の母。
 二人の目の前には、白銀の毛並みを豊かにそよがせた金色の眸の大きな犬がいた。

「闘牙様、そのお姿はあの時の……」

 小さく呟くのは十六夜。

「そうだ。俺はあの時、お前に助けられた狛犬だ。あの時俺は都で暴れるあの魔物、竜骨精を鎮めるために都にやってきた。そして命を落しかけたのを十六夜、お前に助けられた」
「……闘牙様があの時の狛犬だったのですね。ああ、だから初めて闘牙様にお会いした時、どこかでお会いしたように感じたのでしょう。今にして思えば、闘牙様が初めてこの屋敷にこられた夜、寝入ったわたくしを狛犬姿で温めてくださっていたのではないのですか?」

 十六夜は闘牙の正体を知っても、愛しげに言葉を続ける。

「十六夜の母君よ。俺は見てのとおり『人で無いモノ』。そのようなモノに娘をやっても悔いはせぬか?」

 闘牙の言葉に,十六夜の母は背をしゃんと伸ばしこう答えた。

「娘はもう、貴方様に嫁ぐつもりでおります。闘牙様の心根は、わたくしどもには痛いほど判っております。どれほど誠実にわたくしどもを大事に思ってくださっているかは。ならば、わたくしからは何も申す事はありませぬ」
「本当に良いのだな?」
「はい。ああ見えても娘は強情な性質ですし。それに狛は高麗とも書き表します。なれば、この武内の家とも縁がないといえますまい。妖しきは神しきと同義でもございます。神に仕えるのは,光栄な事にござります」

 この時、この場には妖と人間とのあいだを隔てるものはないもなかった。
 あるのは互いを信じあう、真心だけ。

 そしてこの夜から十六夜は、闘牙の妻となった。


  * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


 刀々斉が鉄砕牙を二口の剣に打ち直して闘牙の元に持ってきたのは、それから三月ばかりが過ぎていた。闘牙の存在、十六夜の存在を知りながら、いまだ人間に化けた竜骨精は動きを潜めている。あまりの平穏さと見違えるような十六夜達の暮らしぶりに、朝廷側としても暗黙の内に十六夜達の咎を解いた様な状態になっていた。洛内に戻すことはしないが、今の暮らしぶりを咎めることもしない。
 十六夜の元に通う闘牙の素性を調べようとするとどこかから圧力がかかり、それだけで闘牙と言う者が大物だと察せられ下手に手出しせぬが得策と、こちらもなぁなぁのうちに黙認されていた。

「ほらよ、待たせたな大将。こっちが鉄砕牙、でこっちが天生牙だ」

 いきなり十六夜の屋敷の庭奥に入り込み、庭を眺めていた闘牙の前に無造作に包みを置く。幅広の剛剣作りの鉄砕牙と対照的な細身の長剣である天生牙。闘牙はどちらも持ち比べて、その質の違いを実感する。

「鉄砕牙の方が重たいな。これが人の守り刀として、一振りで百の命を救うのだな」
「ああ。大将が鍛えぬいた鉄砕牙だ。その中には技として、風の傷と爆流派、それから鳴動残月破がついている」
「うむ。それで、その天生牙には?」
「あ~。これか。これは、この世のモノはな~んにも斬れねぇ刀だ。だけど、こいつの使い手に選ばれれば、一度だけなら死んだ命を蘇らせる事ができる。大将の想いを深く刻んだ剣だ」

 そこに体調を崩し、床に横になっていた十六夜があいさつに起きてきた。

「お帰りなさいませ、刀々斉様。人の手では遠く及ばぬ、刀々斉様だから打つ事が出来る剣ですね」
「人の手の…って、姫様はワシの正体を知ってるのか?」

 さり気無い十六夜の言葉に、十六夜は全てを知っていると感じた。

「はい。闘牙様にお聞きしました。ご自分の大事な牙から打ち出した剣だと。それもわたくし達人間を思っての、慈悲のお心からの事。ただただ感謝するばかりでございます」

 ほんの少し留守にしていただけで、十六夜は見違えるように美しくなっていた。内側から潤うようなしっとりとした上品な優しい色香を漂わせている。

「ほぅ。鉄砕牙も二つ身になったが、姫様も今は二つ身か。それはしんどいだろうな」

 刀々斉の言葉に、ぽぅと頬を赤らめる十六夜。十六夜のお腹には、今新しい命が宿っていた。


と、ようやく犬映画第三弾の前夜の前夜くらいには書き進めました。
あ~、まぁ、私の書く話の女性キャラってどこか頑固で積極的な性格になりやすいような気がします。
原作を読む限りだとどうも優しさが際立つような十六夜さんなんですが、それでも周囲の冷たい視線の中で半妖である犬夜叉を生み育ててきた気丈さを思うと、なよなよとした優しいだけのキャラではないだろうと思ったんですね。

でもだからって、逆プロポーズさせるかなぁ^_^; な感じでもありますが……
そんなこんなを思いつつも、あともう踏ん張り。
鉄砕牙と天生牙に込める闘牙王の思いを書いたら、次は竜骨精の陰謀に嵌まってゆく闘牙王・十六夜・猛丸の関係を書いて、その流れから映画の冒頭に繋ぐと。
もう少し、もう少しと自分に言い聞かせながらキーボードを叩いています。

つい、うっかりサイト更新したくなる気持ちを抑えて、ここはちゃんと最後まで書き上げてからと。
今書き上げている分だけでも、十分1ページ分の文章量はあるのですが、それをしたらまた連載回数がかさむ「終る終る詐欺」になってしまいます。
さすがに、3回で完結 → 4回で → 5回で と来ていますから、さすがにこれ以上はですね。
回によって文章量の長さが随分違ってしまうのがちょっと気になりますが、それがその時の勢いってことで大目に見てもらえたら嬉しいです。

2010年06月03日 近況報告 トラックバック:0 コメント:0

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